このコーナーでは、文ちゃんが調べた、走査電子顕微鏡(SEM)の構造や原理、電子線と試料との相互関係、撮影条件や試料条件による像の変化などを、できるだけ易しく説明したいと思います。これからTiny SEMを使い始める皆さんにお役に立てば嬉しいのですが。

■走査電子顕微鏡(SEM)

電子顕微鏡は1930年代にドイツで誕生した。電子顕微鏡には大きく分けて、透過電子顕微鏡(TEMと略している)と走査電子顕微鏡(SEM)がある。前者は、0.05〜1μm厚さの非常に薄い試料に平行な電子線を照射し、透過した電子線を結像させる顕微鏡であり、後者は電子線を細く絞り、試料表面を走査し、表面から放出された電子線を検出して結像させる顕微鏡である。TEMでは、試料を薄くするという前処理が必要であるが、分解能がより高く、原子構造も観察されている。一方SEMは試料をそのまま観察できることと、日常目で見ている像に近いことからいろいろな分野で使われている。しかし、その装置の重さは数百kg以上、値段は数千万円以上であるので、一般には設備の整った研究所や企業の分析室に設置され、研究や検査に使われてきた。最近、デバイスや技術の進歩で、小型で安価なSEMが商品化され、個人でも持てる時代になった。文ちゃんも、三年前に一人でも持ち運びでき、事務机の上に乗せて簡単に操作できるタイニーセム(Tiny SEM1540)と出会い、趣味の道具として個人で購入した。

この装置の詳細や開発の苦労などは、後日、大野社長にお聞きすることにして、まず文ちゃんの理解している範囲で、説明する。

SEMと光学顕微鏡の比較 Tiny SEMの本体
図1 SEMと光学顕微鏡の比較 図2 Tiny SEMの本体


良く知られた光学顕微鏡との比較を図1に示す。光学電子顕微鏡では光を媒体とし、ガラスのレンズを使って拡大するが、電子顕微鏡では電子を媒体とし、電子線を曲げられる磁石のレンズを使う。光学顕微鏡では試料に光を当てて像のコントラストを得るが、SEMでは試料の表面をから放出された電子を検出してコントラストを得る。タイニーSEMの鏡体(本体)を図2に示す。本体の高さは約60cmで重さは約20kgなので、一人で持ち運びができる。中央の筒が顕微鏡部で、上から電子を発生させる電子銃(この装置の最高加速電圧は-15kV)、電子線を細く絞るコンデンサーレンズと対物レンズ、その下に試料室がある。一般のSEMではレンズとして、焦点距離を任意に変えられるように電磁石を使っているが、この装置ではリング状の永久磁石だけである。従来の常識を破って電子線の加速電圧を変えて焦点距離を変える方式である。永久磁石を用いることにより、小型軽量で安価な装置が実現できた。対物レンズの近くには、電子線を走査するコイルが組み込まれている。試料室には試料を保持して移動できる微動装置があり、その右側には表面から発生した電子を取り込む検出器がある。電子線は空気中では散乱が多くて通過できないので、真空にする。鏡体の左側にあるターボモレキュラーポンプが配管を通して鏡体内を真空にする。試料はポンプを止め、鏡体に空気を入れ、試料微動装置を取り出して交換する。





タイニー・カフェテラス支配人 文ちゃん

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