■プラントオパール模様

シダ植物やイネ科植物の葉の表面に、アラベスクを思わせる幾何学模様がある。
今回のギャラリーでは、稲の葉に表れた見事な幾何学模様を紹介する。
稲穂や葉に触ると、ざらざらして刺さるような感触がある。これは、表面の細胞に蓄積された非晶質の含水珪酸体(SiO2・nH2O)である。この含水珪酸体、いわゆるガラスは稲が枯れて土の中に埋まっても、長く保存されることから、プラントオパールと呼ばれている。プラントオパールの形状が種により異なることから、古代の稲作の様子を調べるのに用いられている。
まずは、葉の表面を見る。

稲の葉の表面
図1 稲の葉の表面



葉の長手方向に、ベルト状の列(Aと呼ぶ)と粒状の列(Bと呼ぶ)が交互に配置されている。
それを拡大すると。

A,B列の拡大 図2視野の拡大
図2 A,B列の拡大 図3 図2視野の拡大


図2,3は、A列を中央に、両脇に粒状のB列がある視野を拡大して観察した像である。
図4はさらに拡大して、B列を中央にして撮影した像である。この倍率になると、規則的ではあるが、正確には規則的でない、複雑な模様である事が分かる。これこそ、自然の美である。A列にはところどころに、針状のガラスが付着している。
A列は微細なので、さらに拡大して観察すると。

B列の拡大, A列近傍の拡大
図4 B列の拡大 図5 A列近傍の拡大


A列の拡大 A列の強拡大
図6 A列の拡大 図7 A列の強拡大


図5-7はA列の微細構造を拡大した像である。8の字形の並列構造であることが分かる。
規則的な配列は、アラベスク模様を思わせる。

プラントオパールの立体形状を知るために、ステレオ観察をした。

針状ガラスの立体観察
図8 針状ガラスの立体観察


針の先は鋭く、これに触れば手が痛くなるのが分かる。

8の字模様の立体観察
図9 8の字模様の立体観察


8の字模様は、ちょうど若葉が土から芽生えたように見える。図8,9の背面に見える粒状の構造も突起している事が分かる。



次に、葉の裏面を観察した。
裏面は、表面で見たA列と、ベルトが3列でできた突起列(Cと呼ぶ)から構成されている。C列の間に、A列が6列配置されている。

稲の葉の裏面
図10 稲の葉の裏面


A列とC列を拡大しながら観察した。左側がA列、右側がC列を示す。

A列の拡大1 C列の拡大1
図11 A列の拡大1 図12 C列の拡大1


A列の拡大2 C列の拡大2
図13 A列の拡大2 図14 C列の拡大2


A列の拡大3 C列の拡大3
図15 A列の拡大3 図16 C列の拡大3


A列の8の字模様の表面には、さらに細かい0.1μm程度の薄片が、パン粉のように被っている。雪のように、ガラス質の形成の仕方によるのであろう。
C列には、多くの針状ガラスがある事がわかった。



A列の間に、気孔と思われる穴があったので撮影した。

気孔1 気孔2
図17 気孔1 図18 気孔2


気孔3
図19 気孔3


気孔のあたりも、パン粉のような微細な薄片が表面を被っている。
稲のプラントオパールは、いろいろな面白い模様を見せてくれる。

稲は、焼き物を焼くときに、藁を敷いたり灰をまぶしたりして、一種の釉(ゆう)として使われている。このとき稲に含まれているガラス質のプラントオパールが表面に焼き付いて、微妙な光沢を作るのであろう。

稲は葉の表面にプラントオパールを敷き詰めて、乾燥にも風雨にも強くなっている。機能の上に、なんと美しい構造をしているのであろうか。神様が楽しんで描いた絵画としか思えない。



                               −完−









タイニー・カフェテラス支配人 文ちゃん

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