■竹取物語 カフェテラスを訪問してくれた先輩に、竹炭の構造がどうなっているか知りたいのでSEM写真を撮って欲しいと頼まれた。前に備長炭の構造を観察したので、興味がわき撮影することにした。竹炭試料の入手では、檜原村で窯を作り、材料や焼き方にこだわって竹炭や竹酢を作っている若者(竹工房:無限釜)に出会い、いろいろ教わった。 竹炭は竹を釜で焼いて作ったもので、備長炭と同じように水や空気の浄化、さらにはアクセサリーなどにも使われている。日本の資源としても貴重なものである。 まず、竹炭の横断面のSEM像を見ていただきたい。
図1の下端は竹筒の内皮にあたり、図3の上端は竹筒の外皮にあたる。図2はほぼ中央部である。そこには、三本の導管が束になった構造が周期的にあった。私にはこの導管が顔に見えた。いろんな顔がある。竹筒の内側には、小さな顔が詰まっている。外側には、大きく成長した顔が散らばっている。まさに自然の造形画である。図4は拡大像である。この視野では、ミイラのような顔が並んでいる。導管束の間の細かい網は、細胞膜である。この壁面が吸着、浄化作用をする。
そういえば、「今は昔、竹取の翁という者あり、」で始まる竹取物語の全文(例えば、角川ソフィア文庫)を読むと、かぐや姫は応募した求婚者(貴公子)になかなか得られない奇物を持ってくるようにという難題を出した。結局、誰もそれを持ってくる事ができなかった。その過程では、暴風雨に会い、海に打ち上げられた貴公子や、吊り篭から墜落して病死した貴公子がいる。また奇物を探すように命ぜられ、危険な海や山で犠牲になった家来も多かった。そのような人たちの怨念が、竹に刻み込まれたのではないかと想像したが、いかがであろうか。 竹炭の中には笑顔の顔もあった。これは、結婚までは行かなかったが、かぐや姫と歌や手紙をやりとりして、心を通じ合う事ができた帝(みかど)の顔ではないか。 かぐや姫は、定めに従い、天に帰ることになった。別れを悲しみ涙にくれた、帝、家来、使用人たちの顔に見える。 そして、もっとも悲しみ、寝込んでしまった、じいさん、ばあさんの顔が揃ってあった。 以上竹炭の中に刻まれた、竹取物語でした。 ―完― | |||||||||||||||||||||
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