■ 低加速(1kV)像の観察

TinySEMでは通常加速電圧は約10kVで観察するが、観察に際しての軸調整は、まず加速電圧約5kV程度で調整すると良いと指導されている。5kVで調整した後、もっと加速電圧の低いところではどうかと試みたところ、1kV近くで明るい像が見えた。1kV近傍では発生する電子線も多くなること、極表面の情報のみが観察される特徴があるので興味を持ち、試料の位置を少し調整して1kVの像を観察してみた。極低倍は収差のため周辺がぼけるが、適当な倍率では撮影出来ることが分かった。

まず、透過電子顕微鏡の試料支持に用いられる銅製のグリッド(200メッシュ)を観察した。通常の10kV像と比較するため同一視野を倍率を変えて観察した。左側に加速電圧10kVの像を、右側に今回試みた1kVの像を示す。試料は蒸着などの前処理はしていない。



10kVの銅グリッド低倍像 1kVの銅グリッド低倍像
▲10kVの銅グリッド低倍像 ▲1kVの銅グリッド低倍像


10kVの銅グリッド中倍像 1kVの銅グリッド中倍像
▲10kVの銅グリッド中倍像 ▲1kVの銅グリッド中倍像


10kVの銅グリッド中高倍像 1kVの銅グリッド中高倍像
▲10kVの銅グリッド中高倍像 ▲1kVの銅グリッド中高倍像


1kVの像は5000倍を超えるとボケてくるが、10kVの像に比べ表面の凹凸をより鮮明に、強調して観察できることが分かる。極表面の形状観察には有効であると思う。

次に、1kVでは発生電子線が多くなるので、不導体でも蒸着をしなくても観察できるのではないかと考え、像チェックに使っている「太陽の砂」(沖縄のお土産になっている有孔虫の殻)を観察してみた。

下左の写真は、デジカメにルーペを付けて撮影した太陽の砂のデジカメ写真である。写真中の中央が太陽の砂で、右側の角が三角錐の殻は星の砂と呼ばれているものである。下右のSEM像は、表面に金属を蒸着して撮影した通常のSEM像である。

太陽の砂のデジカメ写真 太陽の砂の極低倍SEM像
▲太陽の砂のデジカメ写真 ▲太陽の砂の極低倍SEM像


次に、太陽の砂に蒸着などの前処理をしないまま加速電圧10kV(左側)と1kV(右側)で同一視野を観察した結果を示す。



太陽の砂の低倍像(10kV) 太陽の砂の低倍像(1kV)
▲太陽の砂の低倍像(10kV) ▲太陽の砂の低倍像(1kV)


太陽の砂の中倍像(10kV) 太陽の砂の中倍像(1kV)
▲太陽の砂の中倍像(10kV) ▲太陽の砂の中倍像(1kV)


太陽の砂の中高倍像(10kV) 太陽の砂の中高倍像(1kV)
▲太陽の砂の中高倍像(10kV) ▲太陽の砂の中高倍像(1kV)


倍率が高くなるほど、10kVでの観察では帯電現象が激しく、いわゆるチャージアップ像になり、形状が分からなくなる。他方1kV像では5000倍くらいまでは、無蒸着のまま観察が出来た。しかも表面の凹凸の情報を鮮明に写し出している。



一般に加速電圧が低くなると、電子線量が減り、鮮明な像は得られない。今回のようにタングステンフィラメントでも1kVの像が得られた原因として次のように考えた。本装置の場合はレンズに永久磁石を用いているので、低加速になればなるほど、レンズの励磁強度は相対的に強くなり、低加速では何度も焦点を結び、結果的に電流の大きな電子線が形成されるのだと考えた。





タイニー・カフェテラス支配人 文ちゃん

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