■ ツユクサの巧みな雄蕊の構造(ツユクサ)
今年は何故か庭にツユクサが多く茂った。夏の高温の気候が影響したのであろうか。 NHKのBS1で、ツユクサのしたたかな生存戦略、という番組が放映され、雄蕊が昆虫を誘うように配置されていることを説明した。 私の本棚にある稲垣栄洋教授の本「身近な雑草の愉快な生き方」にも巧みな雄蕊の配置についてサッカーを例に書かれてあった。 そこで、是非自分でも詳細に確かめたいとツユクサを観察することにした。
図1に示すように、ツユクサは確かに鮮やかな青色の花弁と鮮やかな黄色の3段(図2)からなる雄蕊がある。 青と黄色は反対色の関係であり、お互いが刺激しあっている。青色を背景にした黄色は、ゴッホの絵画、アルルの寝室に見られるように、青い壁を背景に、ベッドや椅子の黄色が浮き立っている。またフェルメールの牛乳を注ぐ女では、エプロンの青と作業着の黄色のコントラストは見る人の眼をひく。このようにツユクサは昆虫を引き付けるように鮮やかなコントラストの雄蕊を持っている。 まず最も鮮やかで大きい雄蕊3に昆虫は誘われる。 しかし、雄蕊3には花粉が少ないので、昆虫は下の雄蕊2に移動する。 雄蕊2の花粉を食べている時、昆虫の体に一番下の雄蕊1の多くの花粉が付着し、それが別の花に運ばれるという説明である。 そのようなツユクサの雌蕊と雄蕊を順次観察した。 まず、雌蕊である。受粉して間もない雌蕊を見つけた。その像を次に示す。 ・雌蕊の受粉
図3は光学顕微鏡で撮影した雌蕊の先端部である。花粉が付着しているのが分かる。 その雌蕊を電子顕微鏡(SEM)で観察したのが図4である。花粉の付着がはっきりわかる。 その左上部に受粉している花粉を見つけた。 その視野の拡大を図5,6に示す。花粉が雌蕊の凹凸部と反応し繋がっているのが分かる。 花粉管が雌蕊に入り込んでいるのであろう。
他の雌蕊にも受粉していると考えられる場所を見つけた。それを図7,8に示す。 ここでは反応が進んでいるのか、花粉が萎み始めている
・雄蕊1 雄蕊1の光学顕微鏡像を図9に示す。雄蕊1には普通の花の雄蕊のように沢山の花粉が付着している。 そのSEM像を図10に示す。中央部をさらに拡大した像を図11,12に示す。 ツユクサの花粉は、ソウセージ型で、表面に小さな突起が沢山ある事が分かった。
・雄蕊2 図13は雄蕊2の光学顕微鏡像である。雄蕊はハの字型で、その尾根部分にかなりの花粉が付着している。 SEMで拡大して観察した結果を図14~17に示す。
花粉の形状は雄蕊1と同じであり、表面に小さな円錐状の突起がある。 ・雄蕊3 オトリの役目をする雄蕊3は、図18に示すように、人形のような形で、鮮やかな黄色で、 ふっくらとして魅力的である。注目すべきは、両側の脇部に少し色の濃い突起が認められた(図20)ことである。
図21,22は他の突起部を拡大して横から見た像であり、図23,24は突起を正面から見た像である。
突起は、器のような物の中に花粉が何個か入っている構造である。 その中に数は少ないが、花粉が入っている事が分かった。このような構造はあまり知られていないのではないか。
ツユクサは一日草であり、日が暮れると萎んでその花の一生が終わる。 図25は萎み始めた花であるが、その時、雌蕊、雄蕊1、さらに雄蕊2も巻き付けて萎む。 その時、昆虫が訪れず受粉ができなかった雌蕊は、自分の雄蕊の花粉を取り込む。すなわち自家受粉をすることができる。 こうして、ツユクサはいろいろな方法で巧みに受粉をする仕組みがある事を実際に観察できた。 ―完― | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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