■ 道端に咲く可憐な花3(ムラサキカタバミ)

前回紹介したカタバミは、鮮やかな黄色の花であったが、その横にこれも鮮やかな赤紫の花が咲いていた。図鑑を調べたところ、ムラサキカタバミであることが分かった。名前から、カタバミの赤色版かと思い観察を始めた。しかし、前回のカタバミとは非常に異なった無性繁殖という性質があることが分かった。今回はそれを紹介する。

ムラサキカタバミの花 花の縦断面
図1 カタバミの群生 図2 一輪をアップで


ムラサキカタバミはある時にはピンクに、あるときは赤紫色に見える。たぶん光の加減だろう。 図1は庭に生えていたムラサキカタバミの花である。図2は雄蕊と雌蕊を見やすくするため、手前の花弁を剥ぎ取った時の光学顕微鏡写真である。白色の雄蕊は二段構えで、上段は雄蕊のみ、下段では緑色の雌蕊と並んでいる。


・雄蕊と雌蕊


雄蕊と雌蕊のSEM像 下段の雌蕊と雄蕊
図3 雄蕊と雌蕊のSEM像 図4 下段の雌蕊と雄蕊


図3は図2で示した縦断面をSEM観察した結果である。図4は下段の雄蕊と雌蕊の拡大である。雄蕊は雌蕊よりやや高い位置にある。SEM像は図2の光学顕微鏡像とほぼ同じ形状で撮影されている。

図4右の雌蕊の拡大 図4の雄蕊の拡大
図5 図4右の雌蕊の拡大 図6 図4の雄蕊の拡大


図5は図4の左側の雌蕊の拡大像である。多くの指のような突起からできていることが分かった。図6は雄蕊の拡大像である。

図3の上段の雄蕊 図7の拡大
図7 図3の上段の雄蕊 図8 図7の拡大


図7は上段の雄蕊であり、図8はその拡大像である。いずれの雄蕊にも花粉が認められない。また図5の雌蕊にも花粉が認められない。ムラサキカタバミの説明で、この花は無性繁殖であると説明されていた。今回の観察で花粉が認められなかったが、これが受粉できない原因ではないか。受粉しないでどのように繁殖するのであろうか、不思議な植物である。

雄蕊雌蕊の下部 雌蕊の中央部
図9 雄蕊雌蕊の下部 図10 雌蕊の中央部


図9は別の花の子房部を観察した写真である。雌蕊の根元には子房の特徴の膨らみは認められなかった。やはり、受粉はできていないのであろう。

雄蕊の上部 図11の拡大
図11 雄蕊の上部 図12 図11の拡大


図10から14は雌蕊の花柱部を下から上に観察した結果である。特に中央部では多数の針状組織が認められた。図14に示すように拡大すると、針状組織表面に約1μm径の粒状組織が覆っているのが分かった。これがどんな働きをするのか、疑問である。

図12拡大 図13の拡大
図13 図12拡大 図14 図13の拡大


今回の一連の観察で、実は雌蕊に花粉が付着している雌蕊があった。はじめは、この花にも花粉があるのではと思った。しかしよく観察すると、いろんな種類の花粉が付着していることが分かった。その写真を紹介する。

雌蕊の房 図15の右側拡大
図15 雌蕊の房 図16 図15の右側拡大


図15は色々な花粉が付着している雌蕊の例である。それの左側を拡大したのが図16である。 よく見ると、写真中にA~Dと書き込んだいろいろな形状の花粉があることがわかった。Aは以前に観察したハハコグサの花粉似ているし、Bはオオイヌフグリの花粉に似ているし、Cはカタバミの花粉に似ている。
これについての説明としては、風や昆虫によりいろいろな花粉が運ばれ、雌蕊に付着したのだろうと解釈した。しかし、よく見ると、それらの花粉が雌蕊と反応しているようである。

図16拡大 図16上部拡大
図17 図16拡大 図18 図16上部拡大


図17は花粉Cの拡大像である。丸い花粉は雌蕊の下地と反応しているようである。また図18は図16上部の花粉Aの拡大像で、下地と反応しているように見える。異種の花の花粉は雌蕊と反応するのであろうか。このような現象から、異種の花が生まれる可能性もあるのだろうか。これについても是非専門家に伺いたい。


・花弁表面


次に花弁表面を観察した。その結果を図19~22に示す。ゼラニュームの花弁ではお椀のような突起状の形状であったが、ムラサキカタバミでは、稲藁で編んだ草鞋(わらじ)の目のように交互に表面に出ている細長い形状をしていることが分かった。

花弁表面 図19拡大
図19 花弁表面 図20 図19拡大


図20拡大 図19下部拡大
図21 図20拡大 図22 図19下部拡大


そのようすは、図21でよくわかる。図22は強拡大像であるが、図19の中央下部に認められた突起部を 拡大撮影した像である。ここにも匂い袋(腺毛)があるのだろうか。また図21の左上部、右上部に気孔の形をした構造が認められる。花弁表面にも気孔があるのだろうか。

咲き終わった花 子房部
図23 咲き終わった花 図24 子房部


図23は、咲き終わり、枯れたムラサキカタバミの花である。花弁を取って子房の部分を観察したのが図24である。通常の花では、子房部が成長して膨らんでいるが、この花では枯れた雌蕊しか見えない。受粉はしていないことが分かる。

花と根部 根の拡大
図25 花と根部 図26 根の拡大


図25はムラサキカタバミを根こそぎ採取したものです。その根元の肥大した根の部分の拡大を図26に示す。下部の白い太い根は牽引根と呼ばれている。その上に小さな球根が沢山あるが、これは木子と呼ばれているようである。木子を上から見たのが図27である。小さい球根が沢山育っている。

根の木子部 木子から分離した新芽
図27 根の木子部 図28 木子から分離した新芽


図28は採取した株から少し離れた場所にあった小さなムラサキカタバミの葉をみつけ、それを掘り起こしたものである。根の部分に木子の一つがあり、それから芽が出て成長したようである。
以上、ムラサキカタバミを調べてきた。この花には雌蕊や雄蕊があるが、花粉が無く受粉ができない。その代わり、根元に多くの小さな球根(木子)ができ、それが分離して、次の世代が増殖していくことが分かった。それにしても、雄蕊と雌蕊の立派な組織があるのに、どうして花粉が無く、受粉ができないのだろうか。何か、理由があるはずである。


後日、ふと思った。そういえば、チューリップやユリは沢山の花粉を付けている。でも咲いた後、実ができていることを見たことがない。どうしてだろう。確かにこれらは根に育った球根で増えることができる。身近な植物にも疑問なことが多い。これからはそれらにも素朴な疑問を持ち、観察をしていきたい。

                  ―完―





タイニー・カフェテラス支配人 文ちゃん

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