■ 塩の結晶成長(汗の結晶)
タイニーカフェテラスに良く来店してくれる石川先輩から、電話があった。「あの塩の結晶の記事は面白かったよ。ところで、汗の結晶はどんな結晶か観てくれないかな」と、想像もしなかった先輩の発想に驚いた。「なるほど、今度観てみます」と約束した。確かに汗には塩分が含まれているはずだから、汗を蒸発させたら汗の塩の結晶を観察できるかもしれない、と思った。幸い、暑い日が続き、節電のためクーラーも使っていないので、昼間は汗をかく。 最初は、汗がにじんだ額にアルミフォイルを押し当てて汗を採集した。それを光学顕微鏡で観察したが、なにか油のようなものが表面を被い、なかなか乾燥しなかった。SEMで観察したが、無定形の塊であった。これは多分、脂汗なのだろう。我々の体は、汗で塩分を失わないように、皮膚の中に血液に戻す機能があることをテレビで知った。激しい運動をして、玉の汗をかくと、体内に戻す機能が間に合わず、やむなく塩分が体外に出て、塩分補給が必要になるらしい。そこで、夕方に出かける買い物を、真昼にして、牛乳やジャガイモなど、重い買い物をしてリュックに背負い、坂道を一気に登って帰った。家に着くと額にも、首にも、みぞおちにも、玉の汗が流れた。額には油成分が多いようなので、みぞおちに流れ込んだ汗玉をアルミフォイルに付着させ乾燥させた。その結果、汗の結晶のようなものが観察できた。 みぞおちに流れ込んだ汗を乾燥させると、二種類の結晶らしき像が観察できた。 一つは、10〜50μmくらいの大きさの敷石のようなものであった。そのSEM像を次に示す。
これが汗の結晶、とするとあまり面白くないなと思っていた時、コントラストの低い何か規則正しい図形が目に入った。その一つを次に紹介する。
図3や4では、ナスカの地上絵やボンベイ遺跡を空から見ているようなパターンが観察され、驚いた。拡大すると(図5,6)幅が1〜2μmのコンクリーの基礎跡のように見える。塩(NaCl)の結晶の単位胞は立方体なので、このような直交する帯に成長したのだろうか。食塩水を乾燥させて得られた結晶とは形状がかなり異なる。残念ながら私の汗の組成は測定できていないが、塩は約1%含まれていると言われているので、おそらく塩の結晶であろう。 汗の結晶に関する情報が少ないので、今回はこれ以上検討を進めないことにする。とにかく、血と汗の結晶とか汗と涙の結晶―、と言われる汗の結晶らしき像が観察できたのがうれしい。 早速、石川先輩に報告した。 思わぬ物を観察できたので、他の視野の像も紹介する。
アルミフォイルの上で乾燥させたので、アルミ結晶の原子列に沿って成長(エピタキシャル成長)したとも考えられるが、図11,12を見ると、異なる方位のパターンが入り混じっているので、可能性は低いと考えられる。 今回、汗の結晶が観察できたことで感激した。汗の結晶に関するこれ以上の調査は、今後の課題としたい。 −完− | ||||||||||||||||||||||||
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