■スギ花粉の正体(その2) 2.スギ花粉の微細構造 前の章では花粉全体の様子の日々変化を観察した。ここでは、各時期に採取した花粉の代表的な物について微細構造を観察した結果を示す。 a. 3月22日採取 代表的な正常花粉の第一は、球状の上に突起がある形状である。
花粉全体が小さな顆粒で覆われ、ところどころに数倍の大きな顆粒があり、その拡大像から大きな顆粒はコンペイトのようにイボイボの表面形状をしていることが分かった。コンペイト状の大きな顆粒の直径は200〜500nmで、イボイボの大きさは60〜120nmである。下地の小さな顆粒は、上の大きな顆粒に成長する前のものと考えられ、数個のイボイボから出来ているように見える。 代表的な正常花粉の第二は、突起(パピラ)の周りが少し窪んでいて、そこの地肌はきれいであるのが特徴的である。成長の後期かもしれない。
突起部にも大きな顆粒が付着していて、前と同じくコンペイトの形状をしている。窪み部を強拡大して見ると、コンペイトのイボが一個に対応するさらに小さな顆粒で覆われている事が分かった。この突起が雄花のなかでどのような役目をしていたかは後日調べたい。 b. 4月10日採取 この時期の花粉の中で、少し萎んではいるが、スギ花粉特有の突起がはっきり認められるものがあり、その詳細を観察した。
形状は3月22日と同じようであるが、側面が少し凹んでいるのが特徴的である。この花粉の側面も、大小の顆粒で覆われている。 さらに、著しく萎んでいる花粉を観察すると、
観察した範囲では、図23のように萎みが著しい花粉で突起が確実に認められるものは見当たらなかった。ひょっとしたら、スギ以外の花粉かもしれない。皺の表面にも大きな顆粒が散在している事が分かった。
これらの大きな顆粒の詳細を観察したところ、いずれの花粉の顆粒もコンペイトの形状をしていてその下地には小さな顆粒がある事が分かった。 c. 4月20日採取 まずかなり多く認められた、割れて口が開いている花粉の詳細を調べた。
この花粉も表面が顆粒で覆われ、最表面には大きな顆粒が散在している。割れた内部はきれいな空洞で、何も認められなかった。
これはつぶれているが、スギ花粉特有の突起と窪み構造をもつ花粉で、その表面にも数は少ないが大きな顆粒が散在していた。この時期の大きな顆粒は形状が崩れているようであるが、コンペイトの形状をしている事を確認する事が出来た。 d. 5月15日採取 この時期で花粉と判断できる形状をしているものに、紙風船を畳んだような形状のものが多かった。その表面を拡大して観察した。
その表面には顆粒が認められ、図33に示すように、大きな顆粒は不鮮明ではあるが、コンペイトの形状をしていることが分かった。 このように、花粉の形状や頻度は時期的に変化はするが、いずれの花粉にも、表面にコンペイト状の顆粒があることが分かった。 −つづく− | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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