■お御足を拝見します(ヤモリ)

このホームページの2007年11月の記事で、ハエトリグモの足裏を観察した結果を報告した。 この時、0.5μm位の非常に細い微細毛が足裏に沢山生えていて、それがファンデルワース力(分子間力)で、ガラス板などに密着できる理由である事を知った。 この種の話題として良く取り上げられるのがヤモリの足である。 ヤモリの足裏も実際に観察したいと思っていたが、我が家に出てくるヤモリは体長が15センチ位で、網で捕まえて庭に出していた。 怖がりの私は検鏡用の試料として捕獲する勇気がなかった。ところが昨年の夏に、子供と思われる体長5センチくらいの小形のヤモリが家に現れた。 多分、家の中で生まれた子供であろう。 はじめは捕まえて庭に放していたが、最後には5匹も現れた。そこで勇気を出して5匹目の子供のヤモリを捕まえて瓶に捕獲した
その写真を図1に示す。

図1 捕獲した子供のヤモリ 図2 ヤモリの前足裏
図1 捕獲した子供のヤモリ 図2 ヤモリの前足裏


図1の上側は背中から撮影した像で、下側は容器の裏側から撮影した腹側の像である。
まじかに見ると、やはりグロテスクである。可愛そうであるが、瓶の中で餓死させた。図2は注目する足裏の光学写真で、広げていた前脚に注目した。
次にSEMで順次拡大して観察した結果を紹介する。

図3 中指のSEM像 図4 図3の拡大像
図3 中指のSEM像 図4 図3の拡大像


図3は中指の拡大像で、図4はその中央部の拡大像である。足裏は掃除用のブラシのようで、沢山の硬そうな毛が層状に生えている事が分かった

図5 各層の拡大 図6 各層の毛はさらに細繊維が束になっている
図5 各層の拡大 図6 各層の毛はさらに細繊維が束になっている


層は約100μmの幅で、図5は層を拡大して観察した像である。 さらに拡大すると(図6)、中央部は毛が詰まっていて、両側には直径約10μmの毛が配列されていて、毛並みは歯ブラシのような構造であった。

図7 層の中央部と両側の構造が異なる 図8 中央部の毛の拡大
図7 層の中央部と両側の構造が異なる 図8 中央部の毛の拡大


図7、8は層の中央部を順次拡大した像で、中央部では密に詰まっていることが分かる

図9 中央部の毛の先端部の強拡大 図10 両側の毛の先端部の拡大
図9 中央部の毛の先端部の強拡大 図10 両側の毛の先端部の拡大


図9はさらに中央部を拡大して像で、先端はさらに枝分かれして、微細毛が生えていることが分かった。
図10は両側の毛群の拡大像で、各毛の先端部からはさらに細かい微細毛が生えている。

図11 毛の先端部の強拡大1 図12 毛の先端部の強拡大2
図11 毛の先端部の強拡大1 図12 毛の先端部の強拡大2


図10のような視野を強拡大した像を図11、12に示す。先端部は花が咲いたように微細毛が生えている。
先端部の幅は約0.3μmであり、ハエトリグモの0.45μmよりさらに細かいことがわかった
。 一匹のヤモリにこの微細毛が何本あるかを想像すると、天文学的な数になるであろう。 この無数の微細毛のファンデルワーズ力により、ヤモリはガラス面でも容易に登り下りができるのある。我々では及ばない巧みな機能を持っている。

私が今まで観察した各虫の微細毛を比較すると次のようになる。

図13 ハエトリグモの足裏の微細毛 図14 イエバエの足裏の微細毛
図13 ハエトリグモの足裏の微細毛 図14 イエバエの足裏の微細毛


図15 コバエの足裏の微細毛 図16 ヤモリの足裏の微細毛
図15 コバエの足裏の微細毛 図16 ヤモリの足裏の微細毛


各虫の微細毛の大きさを写真上で計測して比較すると、

図17 各虫の微細毛の大きさの比較
図17 各虫の微細毛の大きさの比較


微細毛の微細さが密着力に影響すると考えると、ヤモリのように体重が重くて大きい虫は密着力が大きい必要があるので、より細かい微細毛が必要なのかもしれない。

                    ―完―





タイニー・カフェテラス支配人 文ちゃん

タイニー・カフェテラス トップへ戻る

Copyright(C)2002-2008 Technex Lab Co.,Ltd.All rights reserved.
HOME HOME HOME HOME