■夏休みの研究 今回は、私がSEM観察を楽しんでいるアパートの一室(隠れ家)に中学生を招待し、夏休みの理科研究に協力した事を紹介する。 友人のお嬢さんと友達(まりさん、えりなさん)は理科が大好きで、中学校では理科部で活躍している。毎年夏休みに共同で理科の実験をして研究報告を作成しているとのこと。 今回の研究内容は、植物中のシュウ酸塩結晶がどのようなところに多く存在し、酸性度(pH)との関係、薬品で溶けるかどうかについてであった。植物の葉、茎、根の各場所について切片を作製し、光学顕微鏡で観察した。しかし、葉については、軟らかいため薄い切片(約0.3mm)が作れず、葉の内部に存在するはずの結晶が観察でないで困っていた。お母さんから相談を受け、それでは、一緒に電子顕微鏡で観察しましょうということになり、8月初旬、友人が訪問するのも拒んでいた隠れ家に彼女たちを招待した。 先日、彼女たちから嬉しい便りがあった。彼女たちが提出した研究報告が、中学でも、地区でも選ばれ、ついに千葉県の児童生徒科学作品展の科学論文部門で奨励賞を受賞したとのことであった。電子顕微鏡がこのように中学生の研究に活用されたことが大変うれしく、このコーナーで紹介することにした。
まりさん、えりなさんに電子顕微鏡を簡単に説明して実験を始めた。理科部で日常実験しているためか理解が早く、二人で打ち合わせながら、てきぱきと試料作製を始めた。観察も自分でできるようになった。 まず、押し葉にして保存してあったヤブガラシという草の葉の断面を観察した。ヤブガラシは、道端や川沿いに見られる植物で、ツルによる繁殖が激しく、藪も枯らすという名前の由来があるようです。 葉断面を見ると、ありました。すごい!箸を束ねたようなものが写った。これがシュウ酸カルシュウム結晶なのだ。
シュウ酸は植物内の最終代謝副産物で、動物では体外に排出されるが、植物ではカルシュウムやカリユウム塩として残るようです。いろいろな葉の場所にある結晶を観察した後、茎を立てに切り、その断面も観察した。
図5,6は茎断面を横にして見た像で、図5下部には茎内の導管が見られる。特に茎表面近くには、箸束のような針状結晶が多く認められた。 次に、ギシギシという草に観察されたシュウ酸塩結晶を紹介する。 ギシギシも夏の野草で、かなり大きくなる。
ギシギシではコンペイトウというか、立体星型の結晶が認められた。之もシュウ酸カルシュウムなのだろうか。とにかくシュウ酸塩の結晶であろう。 茎断面を見てみると、
茎のいたるところに星型結晶が埋め込まれている。最終副産物であるゴミをこのようにして貯蔵しているのだ。 時間の関係で観察できなかったが、針状のシュウ酸カルシュウムがあると言われている長芋の試料を預かり後日観察してみた。
図11では、卵のような長芋のでんぷん粉が細胞の袋の中にたくさん詰め込まれているのが分かる。ある細胞の中に針状結晶が見つかった。これはシュウ酸カルシュウムであろう。長芋を食べると、シカシカするが、この針状結晶が原因と考えられている。 今回、二人の中学生の向学心から、いろいろな植物の中のシュウ酸塩結晶を観察する機会を得た事を感謝したい。彼女たちが高等学校に進学しても、是非このような自然の不思議に興味を持ち、研究を続けて欲しい。多くの食物の中にもシュウ酸塩が含まれているようなので、いつか、毎日食べているものの中の結晶も調べてみたい。また研究論文でも書いてあったが、この種の情報が少ない。シュウ酸塩は人間だけでなく、家畜やペットの食事についても注意が必要なものであるので、今後深く調べてみたい。 −完− | ||||||||||||||||||||||||
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